◎はじめに

 ほんの50年ぐらい前まで、ほとんどの日本人は田んぼに関わって暮らしていました。移り行く季節の中、八十八の手間をかけて丹精した稲が黄金に実ることは地域共通の喜びごと。一方で「寒さの夏はオロオロ歩く」ことにもなりました。現代に受け継がれる四季の神事には、実りをもたらす自然に感謝し、受け入れ、祈る思いがあふれています。そして、田んぼは水田稲作のリズムに適応して生きる多様な生物を育む場所でもあり、子供たちにとっては格好の遊びのフィールドでもありました。

 世界中の美味しいものが労さず手に入るようになった現代の日本。お米を食べる量は減り、田んぼも減り、そして自然に寄り添い暮らす人も少なくなりました。物質的にはずっと豊かになったはずなのに、食物アレルギー、生活習慣病、偽装表示など、食にまつわる課題はむしろ増え、最近では「フードファディズム」なんて言葉も聞かれるように。なんだか漠然と不安になってしまうのはなぜでしょう?

 心を亡くす、と書くと「忙」そして「忘」になります。土と離れた現代社会でいつも急かされて暮らす私たち。豊かな自然カンキョウより、優良な農地より、もしかしたらココロの方を先に無くしてしまいつつあるのかもしれません。そして、いつしか自分が何を忘れたのかも思い出せなくなってしまうとしたら。。。?

 このたび開催する「八十八の会」。静岡市の藁科の里にて「無農薬・有機栽培」でお米を生産する大橋辰久さんと、確かな醸造技術で全国に多くのファンを持つ由比の神沢川酒蔵場さん(酒銘:正雪)の御協力を頂き、自分たちが育てたお米が日本酒になるまで(もとい、できた日本酒をアリガタく飲み干すまで)の様々な出来事に、主役として関わってみようよ!という会です。

 急峻な土地に水を留め、穀物の中でも抜きん出た収量と高い品質の米を生産する稲作技術、微生物の力で「水」と「米」から複雑で芳醇な風味を持つ清酒を醸す醸造技術は、豊かな水に恵まれた「瑞穂の国」の風土に寄り添って醸成された、日本の財産とも言えましょう。
 自分の五感をフルに使って、自分だけのお米、そして自分だけの珠玉の一滴の誕生に、約1年をかけて携わる。
 飲ん兵衛にはたまらない・・・、いわば「オトナの食育塾」?

 いえいえ、「塾」とは言っても、難しいコトを教えようとか、エラい先生のお話を聞かせようってわけじゃありません。この塾で学べることは、かつての日本人が過ごしていたリズムの中に身を置いて、私たち自信が気づくであろうこと、そのものなのです。

 一面のレンゲ畑、ザリガニ釣りやトンボ取り、スズメと案山子と秋祭り、空っ風と凧あげ競争・・・
 さあ、忘れてしまわないうち、いっちょここらで、一緒にその風景に飛び込んでしまおうじゃありませんか!

 実行委員一同、心よりあなたにお会いできることを楽しみにしております。